動画編集を学び、ポートフォリオも完成した。いよいよ初めての案件に挑戦しようと思ったとき、
「自分のスキルで本当に仕事を受けても大丈夫?」
「スクールの課題と実際の仕事はどれくらい違う?」
「初案件で失敗しないために何を知っておけばいい?」
と不安になる人も多いのではないでしょうか。
筆者も40代・未経験から動画制作を学び、スクール卒業後にポートフォリオを制作。その後、初めて実際の動画制作案件を経験しました。
そこで分かったのは、「動画を作れること」と「仕事として動画を完成させること」は別物だということです。
実案件では編集スキルだけでなく、素材の確認、参考動画の分析、依頼内容のすり合わせ、修正対応、作業時間の管理など、自主制作では経験しにくい問題が発生します。
まだポートフォリオ制作や案件応募の段階まで進んでいない方は、「動画編集スクール卒業後は何をする?未経験から仕事につなげる5ステップ」で、卒業後から案件獲得までの流れを解説しています。
この記事では、初めて動画制作案件を受けた経験から分かった「実務でつまずきやすいポイント」を5つ紹介します。
これから初案件に挑戦する人は、案件を受ける前の参考にしてください。
1|依頼内容だけでなく「支給素材」まで確認する
初案件で最初に感じたのが、制作を始める前の素材確認の重要性です。
自主制作の場合、自分で使用する画像や動画を選べます。解像度が足りなければ、別の素材に変更することもできます。
しかし、実案件ではクライアントから支給された素材を使用するケースがあります。
筆者が担当した案件でも複数の画像素材が支給されましたが、サイズは統一されておらず、横幅568px程度の小さな画像と1280px程度の画像が混在していました。
制作する動画は1920×1080px。
小さな画像を大きく使用すると画質が低下するため、単純に画面いっぱいまで拡大すればいいわけではありません。
ここで重要なのは、
「素材を受け取った=そのまま制作を始めていい」ではないということです。案件開始時には、最低でも次の点を確認しておくと安心です。
- 画像・動画の解像度
- 縦横比
- ファイル形式
- 素材の点数
- 使用必須の素材
- 拡大やトリミングが可能か
素材に問題がある場合は、制作を始める前に相談できれば、後から大幅に作り直すリスクを減らせます。
動画制作というと編集作業そのものに意識が向きがちですが、素材チェックも制作工程の一部です。
2|参考動画は「自分のスキルで再現できるか」まで確認する
動画制作の案件では、「この動画のように作ってほしい」と参考動画を提示されることがあります。
ここで確認したいのは、デザインや雰囲気だけではありません。
その表現にどんな技術が使われているのか、自分のスキルで再現できるのかを制作前に判断することが重要です。
筆者の初案件は、Premiere Proを使った動画制作でした。
ところが参考動画として提示された表現には、当時の自分がまだ使えなかったAfter Effectsの3D機能を使ったような動きが含まれていました。
問題は、筆者自身がそのことを理解できていなかったことです。
当時はAfter Effectsの知識がほとんどなく、提示された動きがどの程度の技術を必要とするものなのか判断できませんでした。
そこでAIに再現方法を尋ねたところ、Premiere Proのスケールと位置を調整することで近い表現ができそうだと分かり、その方法で制作を進めました。
しかし、実際に作ってみると参考動画のような仕上がりにはなりませんでした。
クライアントや間に入っていたディレクターも動画制作の専門家ではなかったため、「参考動画と同じようにしてほしい」という要望と、実際に必要な制作技術との間にギャップがある状態でした。
この経験から学んだのは、初心者にとって怖いのは「できないこと」以上に、「何ができないのかを自分で判断できないこと」です。
もし当時、参考動画の表現にはAfter Effectsの3D機能などの知識が必要だと分かっていれば、「現在の制作環境では同じ表現は難しいです」「Premiere Proで可能な範囲の表現に変更できますか?」と、制作を始める前に相談できたはずです。
場合によっては、その部分の対応を断るという判断もできたでしょう。
しかし、知識がなければ「これは自分のスキルの範囲外です」と判断することすらできません。
初めて案件を受けるときは、参考動画を見て「なんとなく作れそう」と判断するのではなく、
- どのソフト・機能が使われているのか
- 自分が再現方法を説明できる表現なのか
- 分からない表現が含まれていないか
- 現在のスキルでどこまで再現できるのか
を制作前に確認することが重要です。
分からない場合は、経験者に確認したり、事前に短いテストを作ったりする方法もあります。
「できない仕事を断る」ためにも、知識は必要です。
自分ができること・できないことを判断する力も、仕事を受けるうえで重要なスキルです。
3|「修正」と「仕様変更」は分けて考える
動画制作では、初稿提出後の修正は珍しくありません。
文字サイズを変更する、タイミングを調整する、素材を差し替えるなど、制作物を完成させるための修正は当然発生します。
一方で注意したいのが、当初の依頼になかった要望が後から追加されるケースです。
たとえば、「文字を少し大きくしてください」であれば通常の修正で対応できるでしょう。
しかし、「最初とは違う見せ方に変更したい」「新しい演出を追加したい」「構成そのものを変えたい」となれば、必要な作業量は大きく変わります。
場合によっては、一部修正ではなく作り直しに近い作業になることもあります。
初案件では「言われたことには全部対応しなければ」と考えてしまいがちです。
しかし仕事として動画制作を続けるなら、修正なのか、新しい作業が追加されたのかを判断する視点も必要です。
そのためにも案件開始前に、
- 修正回数
- 修正対応の範囲
- 大幅な仕様変更が発生した場合の対応
- 追加料金の有無
などを確認しておくことが重要です。
これはクライアントと対立するためではありません。最初に条件を共有しておくことで、双方にとって「どこまでが今回の依頼なのか」が分かりやすくなります。
4|案件の金額だけでなく「作業時間」で考える
初案件では、「まずは実績を作りたい」という気持ちから、報酬額を優先せず仕事を受けることもあるでしょう。
経験を積むために、最初は単価の低い案件に挑戦すること自体が悪いわけではありません。
ただし、案件終了後には必ず実際に何時間かかったのかを確認することをおすすめします。
筆者の初案件は1本22,000円の案件でした。しかし、制作に加えて複数回のやり直しが発生し、作業時間は当初の想定を大きく超えました。さらに仲介手数料が差し引かれる案件だったため、実際に受け取る金額と作業時間を考えると、決して効率のよい仕事とはいえませんでした。
ここで大切なのは、「安い案件を受けて失敗した」と考えて終わらせないことです。
報酬 ÷ 実際の作業時間
で実質的な時給を把握すると、次回からどの程度の金額で案件を受けるべきか判断する材料になります。
さらに作業時間を記録しておけば、「素材整理に時間がかかった」「アニメーション制作に時間がかかった」「修正対応が想定以上だった」など、改善すべき工程も見えてきます。
初案件では利益だけでなく、自分が1本の動画を完成させるためにどれくらいの時間が必要なのかを知ることも大きな収穫です。
5|編集スキル以外の「仕事力」が必要になる
初案件を経験して大きく感じたのが、動画制作の仕事では編集スキルだけが必要なのではないということです。
スクールや自主制作では、
「どう動かすか」「どう見せるか」「ソフトでどう実装するか」といった制作技術に意識が向きます。
しかし実案件では、それ以前に、
- 依頼内容を正しく理解する
- 不明点を確認する
- 必要な素材を把握する
- 制作条件を整理する
- 途中経過を共有する
- 修正内容を正確に理解する
といったコミュニケーションも必要です。そして、分からないことを確認するのは「プロらしくない行為」ではありません。曖昧なまま制作を進め、完成後に認識のズレが発覚すれば、制作者にもクライアントにも余計な負担が発生します。
制作前に確認すべきことを整理し、必要な情報を聞くことも、動画制作の仕事をスムーズに進めるためのスキルです。
初案件では動画制作技術だけでなく、「仕事として制作を進める力」も身につけていく必要があると実感しました。
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初案件は「自分に足りないもの」を知る機会になる
初めて動画制作案件を受ける前は、「もっと上手くなってから仕事を受けたほうがいいのでは」と不安になるかもしれません。もちろん、案件を受けるための最低限のスキルやポートフォリオは必要です。
しかし、自主制作だけでは分からないこともあります。筆者の場合も初案件を経験したことで、素材確認、参考動画の技術的な分析、修正範囲、作業時間、コミュニケーションなど、次の案件までに改善すべきポイントが具体的に見えてきました。
特に大きかったのは、知識が増えることで「できること」だけでなく「できないこと」も判断できるようになると分かったことです。
初心者のうちは、仕事を断ることに不安を感じるかもしれません。しかし、自分のスキルでは対応できない仕事を正しく判断することも、仕事を続けていくためには必要です。
初案件で最初からすべてを完璧にこなすことよりも、経験したことを次の仕事にどう活かすかが重要です。
これから初案件に挑戦するなら、制作を始める前の確認がとても重要です。
次の記事では、今回の経験をもとに「初案件を受ける前に確認しておきたいこと」を、実際に使えるチェック項目として具体的に解説します。
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