AIで動画や画像を簡単に作れるようになってきた今、
「これから動画制作を学んでも遅い?」
「After Effectsを勉強しても、AIに仕事を奪われるのでは?」
「数年後には、動画クリエイター自体が必要なくなる?」
「せっかく時間とお金をかけて学んでいるのに、無駄にならない?」
こんな不安を感じていませんか?
生成AIの進化によって、これまで人が時間をかけて行っていた制作作業の一部を、短時間でできるようになってきました。
動画制作も例外ではありません。
テキストや画像から動画を生成するサービスも登場し、AIはすでに映像制作に使えるツールの一つになりつつあります。
では、これから動画制作の仕事はAIに置き換わってしまうのでしょうか。
現時点では、「動画制作の仕事がすべてなくなる」と考えるより、「動画制作の中で人が担当する仕事が変わっていく」と考えるほうが現実的です。
重要なのは、AIと同じことを人間が速くできるようになることではありません。
AIに任せられる作業は活用しながら、人が判断する必要がある部分のスキルを伸ばしていくことです。
この記事では、AIによって動画制作の仕事がどう変わる可能性があるのか、そしてこれから動画制作を仕事にしたい人が何を身につけておくべきなのかを考えていきます。
1|AIで動画制作の「作業」はすでに変わり始めている
AIによる動画制作は、もう遠い未来の話ではありません。
現在は、テキストから動画を生成したり、静止画から映像を作ったり、AIを使って制作を補助したりできるツールが登場しています。
そのため、これまで制作者が時間をかけていた作業の一部は、今後さらに効率化されていく可能性があります。たとえば、
- アイデア出し
- 構成案のたたき台
- 絵コンテのたたき台
- 仮ナレーション
- 字幕作成
- 素材制作
- 簡単な映像生成
- 編集作業の補助
などです。
こうした変化を見ると、「AIか、人間か」という二択ではなく、「人がAIを使いながら制作する」という働き方が広がっていく可能性があります。
2|「動画制作の仕事がなくなる」とは限らない
AIについて考えるときに注意したいのが、「AIで作業を自動化できる」=「その職業そのものがなくなる」とは限らないことです。
国際労働機関(ILO)が2025年に発表した「Generative AI and Jobs: A 2025 Update」では、世界の労働者のおよそ4人に1人が、何らかの形で生成AIの影響を受ける可能性のある職業に就いていると推計されています。
一方で、人間の関与が引き続き必要な仕事も多いため、ILOは多くの仕事について、完全に不要になるというよりも仕事内容が変化していく可能性が高いとしています。
さらにILOが2026年に公表した生成AIと雇用に関する実証研究のレビューでは、生成AIによる生産性向上は確認されている一方、現時点で大規模な雇用喪失は限定的だと報告されています。
動画制作についても、同じように考えることができます。
1本の動画を作る仕事には、
企画する
↓
目的を整理する
↓
構成を考える
↓
素材を選ぶ
↓
デザインする
↓
動きを作る
↓
修正する
↓
完成させる
という複数の工程があります。
この中の一部をAIが担当できるようになったとしても、すぐにすべての工程が人間からAIへ移るとは限りません。ただし、「人がやらなくてもいい作業」が増えていく可能性はあると考えておいたほうがいいでしょう。
3|「指示されたものを作るだけ」の仕事は影響を受けやすい
では、動画制作の中でどのような仕事がAIの影響を受けやすいのでしょうか。一つのポイントになるのが、作業内容がどの程度決まっているかです。たとえば、
「この文章をテロップにしてください」
「この素材をこの順番で並べてください」
「決められたテンプレートに当てはめてください」
といった作業は、制作者が判断する範囲が比較的少なく、自動化しやすい領域だと考えられます。今後AIの精度が上がれば、こうした定型的な制作作業の価値は変化していく可能性があります。これは「動画編集ソフトを操作できることに価値がなくなる」という意味ではありません。問題は、ソフトを操作できることだけを自分の価値にしてしまうことです。
After Effectsの操作方法を覚えることも、Premiere Proを使いこなせるようになることも必要です。しかし、「なぜこの動きにするのか」「何を一番伝えたいのか」「この情報をどう整理すれば伝わるのか」まで考えられるようになることで、単純な作業とは違う価値を持ちやすくなります。
4|これから重要になるのは「作る前の判断」
AIが制作作業の一部を担うようになるほど、人に求められるのは何を作るべきかを判断する力だと考えられます。
たとえば企業から、「新しいサービスを30秒の動画で紹介したい」と依頼されたとします。必要なのは、After Effectsを開いてすぐにアニメーションを作ることではありません。まず、
「誰に見てもらう動画なのか」
「何を伝えればサービスの魅力が伝わるのか」
「30秒の中でどの情報を残すのか」
「どんな順番なら理解しやすいのか」
「実写・図解・文字・アニメーションのどれが適しているのか」
を考える必要があります。
こうした判断ができれば、その後の制作工程の一部にAIを使うこともできます。つまり、自分ですべて作れる人になることだけが、AI時代の正解ではありません。AIを含めた複数の制作手段から、「この目的なら、何をどう使えば一番伝わるのか」を判断できることも重要になっていきます。
5|After Effectsを学ぶ意味はなくならない
「AIで動画を生成できるなら、After Effectsを今から学ぶ意味はないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、AIが普及することと、制作の基礎を学ぶ必要がなくなることは別の話です。AIが作った映像を見ても、
「動きが不自然」
「文字が読みにくい」
「情報の優先順位がおかしい」
「この演出は目的に合っていない」
と判断するためには、動画やデザインについての知識が必要です。知識がなければ、AIが出したものが良いのか悪いのかを判断すること自体が難しくなります。また、AIで作ったものをそのまま使うのではなく、After Effectsなどで調整したり、複数の素材を組み合わせたりすることもできます。
そのため、「AIがあるから制作スキルはいらない」ではなく、「制作スキルがあるからAIを道具として使える」と考えたほうがいいでしょう。
6|仕事でAIを使うなら権利関係の確認も必要
AIを動画制作に取り入れるときは、「作れるかどうか」だけではなく、仕事としてその素材を使って問題ないかという視点も必要です。たとえば、
- 使用するAIサービスの商用利用条件
- 生成した素材の利用条件
- 他者の著作物やブランドの扱い
- 人物の肖像に関する問題
- クライアントがAI生成素材の使用を認めているか
などです。AI生成物と著作権の扱いについては、国や地域によって制度が異なり、現在も議論や整理が続いています。
一例として、米国著作権局が2025年に公表したAIと著作権に関する報告書では、AIを創作の補助として使うこと自体が著作権保護を妨げるわけではない一方、AIが生成した表現について著作権保護を受けるためには、人間による十分な創作的関与が必要だという考え方が示されています。
これは米国における考え方であり、日本の案件にそのまま当てはめられるものではありません。
大切なのは、「AIで作れるから使う」のではなく、「この案件で使って問題ないか」を確認することです。特に企業案件では、制作スピードだけでなく、安心して利用できる素材なのかという視点も必要になります。
7|初心者が今から身につけたい5つの力
AIの進化を正確に予測することはできません。だからこそ、「将来どのソフトが使われるか」を当てようとするより、環境が変わっても活かしやすいスキルを身につけておくほうが現実的です。これから動画制作を仕事にしたいなら、特に次の5つを意識しておきたいところです。
① 動画制作の基礎
構図、文字、色、余白、動き、音など、動画を見やすく伝わりやすくするための基礎です。
AIが制作したものを評価・修正するためにも必要になります。
② 情報を整理する力
「何を伝えるか」「何を削るか」「どの順番で見せるか」を考える力です。
特にサービス紹介動画やインフォグラフィック動画では重要になります。
③ 目的から表現を考える力
派手なモーションを作れることよりも、「なぜこの表現を使うのか」を考えられることが重要です。
④ クライアントの要望を理解する力
実案件では、クライアント自身が「どんな動画を作ればいいのか」を完全に言語化できているとは限りません。
要望を整理し、必要な確認を行い、制作物へ落とし込む力が必要です。
⑤ AIを制作工程に組み込む力
AIを避けるのではなく、「どこをAIに任せるか」「どこを自分で判断するか」を考えられるようにします。
世界経済フォーラム(WEF)の「Future of Jobs Report 2025」でも、AIやビッグデータなどの技術スキルだけでなく、創造的思考、柔軟性、適応力などのスキルも今後重要性が高まるとされています。
つまり、AI時代に必要なのは、制作スキルかAIスキルか、どちらか一方ではありません。
両方を使いながら、最終的な判断ができることが重要になります。
AIを恐れるより「使える側」に回る
AIがこれから動画制作にどこまで影響するのかを、現時点で正確に予測することはできません。
動画制作の一部の作業が減る可能性もありますし、これまで存在しなかった新しい制作方法や仕事が生まれる可能性もあります。
ただ、一つ確かなのは、制作方法はこれからも変わっていくということです。
だからこそ、「AIに仕事を取られない方法」を探すより、「AIがある環境で、自分はどんな価値を提供できるのか」を考えるほうが現実的です。
After Effectsを学ぶ。
デザインを学ぶ。
情報を整理する力を身につける。
そしてAIも使ってみる。
そのすべてが、これからの動画制作につながっていきます。
スクール卒業後、ポートフォリオ制作や案件獲得も含めて何から進めればいいのか迷っている方は、「動画編集スクール卒業後は何をする?未経験から仕事につなげる5ステップ」で、仕事につなげるまでの流れを紹介しています。

【公開予定】
また、AIを実際の動画制作でどう使えばいいのかについては、「動画制作にAIを取り入れる具体的な方法」で、企画・構成・素材制作・編集など、制作工程ごとの使い方を紹介します。
