動画制作にAIを活用したいと思っても、
「AIに何を頼めばいいのか分からない」
「画像生成以外に、動画制作でAIをどう使えるの?」
「AIを使うと、逆に修正する手間が増えそう」
「After Effectsで作る部分までAIに任せていいの?」
こんな疑問はありませんか?
AIで動画そのものを生成するサービスが注目されがちですが、動画制作におけるAIの使い道は「完成した動画を作ってもらう」だけではありません。
企画を整理する。
構成案を作る。
絵コンテを考える。
素材を準備する。
分からない技術を調べる。
編集作業を効率化する。
こうした制作途中の作業をAIに手伝ってもらうこともできます。
特に動画制作を始めたばかりの頃は、「何を作ればいいのか」「どう表現すればいいのか」を考えている時間が長くなりがちです。
そこでAIを「代わりに作品を作るもの」ではなく、制作を進めるためのアシスタントとして使うと、活用できる場面が大きく広がります。
この記事では、動画制作の流れを
企画 → 構成 → 絵コンテ・画面設計 → 素材制作 → 編集・モーション制作 → チェック
の6つに分けて、AIをどこで、どのように取り入れられるのかを具体的に紹介します。
1|企画段階|頭の中にあるアイデアを整理する
動画制作で最初にAIを活用しやすいのが、企画段階です。
たとえば、「採用動画を作りたい」というところまでは決まっていても、
「何を伝える動画にするのか」
「どんな切り口なら興味を持ってもらえるのか」
「30秒で何を見せればいいのか」
まで決めるのは簡単ではありません。そんなときは、AIに完成した企画を丸ごと考えてもらうのではなく、自分の考えを整理する相手として使います。
たとえば、「20代の求職者向けに30秒の採用動画を作ります。企業の特徴は研修制度、若手が挑戦できる環境、働きやすさの3つです。動画で一番伝えるべきメッセージを5案出してください」というように、
- 誰に
- 何を
- 何のために
- どのくらいの尺で
を伝えると、アイデアを具体化しやすくなります。出てきた案をそのまま採用する必要はありません。
「これは違う」
「この方向は使えそう」
「もっと若い人向けにしたい」
と選びながら、自分の企画を固めていきます。AIに正解を出してもらうのではなく、考えるための選択肢を増やしてもらう。これが企画段階での使い方です。
2|構成段階|伝える順番のたたき台を作る
企画が決まったら、次は動画の構成を考えます。たとえば30秒のサービス紹介動画なら、
0〜5秒:悩み
5〜10秒:サービス紹介
10〜20秒:特徴
20〜27秒:利用するメリット
27〜30秒:CTA
というように、時間の中に情報を配置していきます。
この「何を、どの順番で、何秒見せるか」を考える作業にもAIを使えます。
たとえば、「30秒のサービス紹介動画を作ります。ターゲットは○○、サービスの特徴は○○です。最初の3秒で興味を引き、最後にCTAを入れる構成案を作ってください」と依頼します。
ここで重要なのは、AIが出した構成をそのまま動画にしないことです。
「この情報は本当に必要?」
「最初にこれを見せて興味を持ってもらえる?」
「30秒で理解できる情報量?」
と、人がもう一度判断します。AIが得意なのは、ゼロの状態から最初のたたき台を作ることです。人はそのたたき台を見ながら、不要なものを削り、順番を変え、目的に合った構成へ調整します。白紙の状態からすべてを考えるより、制作を始めやすくなります。
3|絵コンテ・画面設計|「何を見せるか」を具体化する
構成ができたら、次に考えるのが画面です。たとえば、「成長できる会社です」というメッセージを伝える場合でも、
文字だけを見せるのか。
グラフを使うのか。
人物の映像を使うのか。
アイコンや図解で表現するのか。
選択肢はいくつもあります。ここでもAIをアイデア出しに使えます。
たとえば、「『入社後も成長できる会社』という内容を、採用動画の5秒間で表現します。実写、タイポグラフィ、インフォグラフィックの3方向で画面表現の案を出してください」といった使い方です。
さらに、画像生成AIを使ってラフなビジュアルを作り、画面の方向性を確認することもできます。ChatGPTの画像生成でも、自然言語で画像を作り、構図やサイズなどを変更しながらバリエーションを検討できます。ただし、ここで作る画像は必ずしも完成素材である必要はありません。
「この構図でいけそう」「人物は右側にいたほうが文字を置きやすい」など、制作前に方向性を確認するためのラフとして使うだけでも十分です。
4|素材制作|必要な素材の準備をAIで効率化する
動画制作では、編集そのものより素材を探している時間が長くなることがあります。
「この場面に合う写真がない」
「イメージに合うイラストが見つからない」
「あと数秒だけ映像が欲しい」
といったケースです。こうした場面では、AIによる画像・動画生成が選択肢になります。
- 背景画像を作る
- イメージカットを作る
- コンセプト確認用の画像を作る
- 足りないBロールの候補を作る
- 効果音を生成する
といった使い方が考えられます。2026年9月現在、Adobe Premiereでは「生成メディアツール」を使い、タイムライン上からテキストで指示して動画や効果音を生成できる機能が提供されています。
生成した素材はタイムライン上で編集可能なクリップとして扱えるため、別のアプリで素材を作ってから読み込む必要もありません。また、Premiereの「生成延長」では、映像や音声クリップの前後に不足している部分を生成して延長することもできます。
「あと少しだけリアクションを長く見せたい」
「トランジションのために数フレーム欲しい」
「環境音が途中で切れてしまった」
といった場面で利用できます。AIを使うことで、「必要な素材がないから表現を諦める」以外の選択肢が増えてきています。
5|After Effects制作|分からない技術をAIに相談する
After Effectsを使い始めると、
「この動きはどう作る?」
「このエクスプレッションは何を意味している?」
「エラーが出たけれど原因が分からない」
という場面が頻繁にあります。こうした技術的な問題を調べる相手としてAIを使う方法もあります。
「After Effectsで5つのシェイプレイヤーを0.2秒ずつずらして表示したい。初心者でも分かる手順で説明してください」
と聞けば、調べるべき機能や制作手順のたたき台を得られます。
エクスプレッションについても、「このコードが何をしているのか説明して」「10秒ごとに繰り返すように変更したい」といった相談ができます。
さらに2026年8月には、AdobeがAfter Effects(Beta)に「AI Assistant」を導入しました。自然言語による指示で、
- レイヤーやコンポジションの整理
- エクスプレッションの作成
- エクスプレッションのデバッグ
- 画像・動画の生成
などを行える機能です。
(ただし、2026年9月時点ではAfter EffectsのAI Assistantはベータ版です。)
また、AIが提示した制作方法が常に最適とは限りません。分からない機能を調べる入口としてAIを使い、必要に応じてAdobe公式ヘルプなどで確認する習慣も持っておきましょう。
6|編集作業|「考えなくていい作業」をAIに任せる
AI活用というと画像や動画の生成に目が向きますが、実務ではむしろ、単純作業を減らす使い方が役立つことがあります。
素材を整理する。
名前を付ける。
文字起こしをする。
字幕を作る。
必要な素材を探す。
こうした作業です。
PremiereでもAIを活用した機能が増えており、AI Assistant(Beta)では、素材整理、クリップ名の変更、文字起こしの処理、マーカー追加、素材からの最初の編集などを自然言語で指示できます。
こうした機能で重要なのは、クリエイターが考える必要のない作業に使うという考え方です。
素材整理に30分かけていた時間を短縮できれば、
「この構成で伝わるか」
「この動きでいいか」
「もっと分かりやすい見せ方はないか」
という制作の判断に時間を使えます。AIを使う目的は、単純に「早く作ること」だけではありません。人が考えるべきところに時間を残すことも、AIを使うメリットです。
7|完成前のチェック|AIを「もう一人の確認役」にする
動画が完成したあとにもAIを使えます。たとえば動画の台本やテロップを書き出して、
- 誤字脱字はないか
- 表記が統一されているか
- 同じ内容を繰り返していないか
- 説明が分かりにくい部分はないか
- 専門用語が多すぎないか
などを確認してもらいます。構成段階の企画書と完成した台本を比較して、「最初に伝えたかった内容からズレていないか」をチェックする方法もあります。ただし、ここでもAIの判断を最終判断にしないことが重要です。AIが「問題ありません」と答えても、実際の動画を見て、
文字は読めるか。
テンポは適切か。
音は聞きやすいか。
意図した内容が伝わるか。
を最後に確認するのは制作者です。
AIを使うときは「任せる作業」と「自分で判断する作業」を分ける
ここまで紹介した方法を整理すると、動画制作ではさまざまな工程でAIを利用できます。
AIに任せやすいこと
- アイデアの候補を出す
- 構成案のたたき台を作る
- 表現方法の候補を出す
- ラフ画像を作る
- 素材を生成する
- 単純作業を効率化する
- 技術的な問題を調べる
- 誤字や文章をチェックする
人が判断したいこと
- 誰に何を伝えるか
- どの企画を採用するか
- 何を削るか
- どんな表現が目的に合っているか
- AIの出力が正しいか
- クライアントの要望に合っているか
- 最終的な品質に問題がないか
この境界を意識すると、AIに振り回されにくくなります。AIに全部作ってもらうのではなく、AIがたたき台を作る → 人が選ぶ → AIで試す → 人が調整するという往復で使うイメージです。
毎回使う作業は「自分の型」にしておく
AIを動画制作に取り入れるなら、毎回ゼロから「何を頼もう」と考える必要はありません。何度も使う作業は、自分なりの型にしておくと便利です。たとえば企画段階なら、
目的
この動画で何を達成したいか
ターゲット
誰に見てもらうか
尺
15秒・30秒・60秒など
伝えたいこと
最も重要なメッセージ
媒体
YouTube・Instagram・Webサイト・広告など
必要なアウトプット
企画案・構成案・絵コンテ案など
という項目を毎回AIに渡します。
構成案を作るとき、絵コンテを考えるとき、チェックするときにも、それぞれ自分が使いやすい指示の型を作っておけば、制作のたびに同じところから始めなくて済みます。
ただし、テンプレートを作る目的は、毎回同じ動画を作るためではありません。毎回必要になる情報整理を省力化して、作品ごとに考えるべき部分へ時間を使うためです。
まとめ|AIで制作時間を短くし、「考える時間」を増やそう
動画制作にAIを取り入れるというと、「AIに完璧な動画を作ってもらう」ことを想像しがちです。
しかし実際には、企画の壁打ちから構成のたたき台、素材作成、テロップのチェックまで、制作のあらゆる工程を助けてくれる優秀な「アシスタント」です。
AIに振り回されないためには、以下の役割分担を意識するとスムーズです。
・AIに任せること:アイデア出し、たたき台作成、ラフ素材生成、単純作業の自動化、チェック
・人が判断すること:誰に何を伝えるか、どの案を採用するか、表現が目的に合っているか
まずは、自分が動画を作っていて「ここでいつも時間がかかる」「手が止まる」という工程を一つ見つけ、そこからAIを取り入れてみてください。
毎回使う指示(プロンプト)は「目的・ターゲット・尺」などの型(テンプレート)にしておくと、さらに効率が上がります。
AIで作業時間を短縮できれば、その分、構成やデザイン、モーションなど、あなた自身が「考えるべき部分」に時間を使えるようになります。
AIで動画制作の仕事そのものがどう変わるのかについては、「AIで動画制作の仕事はなくなる?これから求められるスキルと初心者が今できること」で詳しく解説しています。
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